スイフトスポーツ
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モンスタースポーツはスズキスポーツ時代から、JWRC(ジュニア世界ラリー選手権)をはじめとしたモータースポーツからストリートまで、スイフトとともに駆け抜けてきました。その軌跡を綴ってゆく新連載が「SWIFT with MONSTER」第3回はスズキスポーツ時代から現在のモンスタースポーツに至るまで、ストリート、競技車両全般において開発統括を務める「田嶋 直信」チーフエンジニアが登場します。

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田嶋 直信 (モンスタースポーツチーフエンジニア/スズキJWRC株式会社/スズキスポーツ副社長)
株式会社スズキスポーツの副社長として、スズキJWRC、WRC活動でボディーワーク全般を統括。さらにJWRC参戦以前よりバイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムほか、モンスタースポーツ/スズキスポーツが行ってきたモータースポーツ活動の全てでエクステリアデザイン/エアロダイナミクス開発チームを指揮。
【レギュレーション上市販車にかなり近い、JWRC車両】
-最近はZC33型のスイフトスポーツが出て、スイフトの界隈が盛りあがって来ています。
スイフトって言うと、スポーティーとか皆さん色んな事言いますけれども、全ての元になったのは、我らがモンスタースポーツが手塩に掛けて育ててきたこのスイフトの数々。
ちなみに今僕らの目の前にあるのは何ですか?

「二代目のスーパー1600の基礎実験モデルのイグニスのスーパー1600の風洞実験モデルです。」

-スーパー1600、最初の3ドアのHT81モデルから始まってそのあとに5ドアになった、あのモデル。基礎実験というのは何をするのですか?

「レギュレーションで決まっているような話だったり、大体こんな形で進めて行くのかなという、最後のファインフィニッシュに行く前の所を見るモデルです。」




【ラリーならではの空力開発】
-モンスタースポーツではパイクスピークのマシンも作っていて、あのパイクスピークのマシンは原型を残しているとは言っても全く違う物じゃないですか。
それに対して、このJWRCのモデルって、ほぼ市販車そのものですよね?

「元々の市販車の車をベースに、レギュレーションで許されているモディファイを行って、少しでも競争力が上がるような空力処理等を行い、メーカーからのPR活動の一環で行っておりますので、極力魅力的な車に仕上がるような、その辺のバランスを取りながら仕上げて行くという基本的な流れです。」

-ただ、やっぱりこのイグニスって、空力優れているなっていう風に素人目には見えないんですよ。プロの目から見るとどうなんですか?

「ベースの車の空力特性だったり、CDだったり、そういう所が優れているモデルの方が、もちろん空力的には有利なのですが、ラリーという競技で勝つというところで行きますと、単に空力だけではない、サスペンションの特性だったりセッティングだったり、エンジンの特性だったり乗り味だったりもちろん空力的な配慮だったりとか冷気系の配慮とか、色々ありますけれども、全体を上手くやって行けば更に良い車と比べると不利な部分はありますけれども、致命的ではない。
またこのカテゴリー自体が、ハッチバックの車が基本ベースでやっておりますので、他社の車もそんなに流線形の車ではないので、そういう中では良いとは言えませんが、これで何とかしましょうという形でした。
この時代は基本的にオーバーフェンダーの部分なんかも拡幅されたフェンダーをスムーズにボディに繋げなさいという言い方をされていて、“空力的な効果があってはダメです”みたいな縛りがあったんです。
最近のワールドラリーカーは、少し前のパイクスピークの車のような、フェンダーのところに空力デバイスが付いていますけれども。」

-ヤリスのフェンダーすごいですよ。

「この当時はそういう処理は許されていなかったんです。基本競技用の車というのはレギュレーションで縛られておりますので。」










【競技車両の性能・形状を決める「レギュレーション」とは?】
「車の頂点はF1というのはイメージはありますが、空力的に見るとCカーとかル・マンの車の方が確実に良いわけで、オープンホイール(タイヤがむき出し)というのは、あれはレギュレーションで“タイヤが出ていなくちゃいけない”というのがあって、あの形になっています。
我々車も作っているので良く分かるのですが、“ドア作る”“ワイパー付ける”“室内の色々な処理をする”というのは、車を作る中で予想以上に手間がかかるんです。
フォーミュラーとかは一番シンプルに作って、作りやすい速い車でレースしようという流れだったと思います。
一番簡単な形で車が出来たから、基本あのスタイルでずっと来ていると思います。
性能だけを目指してフリーに作りなさいと言うと、全然違う形になっていたと思います。

-特にこのJWRCは、その逆の所に、その意味で言うとあるわけじゃないですか。

「このカテゴリーはドライバーを育てるためのカテゴリーであったという事と、リーズナブルな性能の良い車をドライバーが手に入れられるように、レギュレーションで“販売しなくてはいけない”という括りもありましたし、最近ですと市販車でもカーボンファイバーのドライカーボンの部品とかを使っていますけれども、スーパー1600はドライカーボンとかを使ってはいけない。
一層だけ見栄えで、ウエットのカーボン繊維を入れた処理は許されておりましたけれども、基本FRPでないとダメという括りがありました。

-ノーマルと比べてそこまで軽く出来なかったんですか?

「ラリーカーですから、逆にロールケージとか安全のための物が入りますので、ボディだけで言うと少し重くなったかもしれません。それでも取れる所は取って、外す所は外して、極力軽く作る事をやっているので。」








【JWRC車両のエアロ開発と市販パーツへのフィードバック】
-そんなもの凄く厳しいレギュレーションの中でラリーカーを作って来て、その中でもモンスタースポーツって社内に風洞があるじゃないですか。その風洞を使って色んな実験をされていたんですよね?

「このカテゴリーのラリーという競技で言うと、どちらかと言うと絶対的なCDよりもジャンプした時の姿勢、リヤウイングの役目はそれです。」

-それって風洞実験で何か分かる物なんですか?

「この中で極力リヤを強くする。ここでまた縛りが出て来るのですが、もう少し大きくすればいいと思いますよね?これは確か16cm×16cmの正方形で、長さが1m位の箱に入らなくてはいけないというレギュレーションだったんです。
あと前方から見てウイングが見えてはいけない。全体でみると小ぶりなのは、レギュレーションで縛られていた。

-そのレギュレーションがあったおかげで、モンスタースポーツの売っている、このリヤウイングってJWRCのと、ほぼ形一緒ですよね?市販モデルが。
それって多分レギュレーションのおかげなのかなと思います。

-ボンネットフードも随分工夫があったみたいですね。

「ボンネットフードも開口面積が決まっていて、何平方センチ以下にしなさいというのがあって、市販する事を考えると加工しやすい穴の開け方で、効果のある場所を実験でやりながら。
初代のスーパー1600のHT81で言うと三角形みたいな物が二つ位開いていたと思うのですが、あれは後ろの骨の空いているスペースで一番大きく取れる所に所定の面積を取った。
ただあの場所は風圧が出ている領域なので、もちろん効果はちゃんと出ています。
次のこれになりますと、1つの穴でボンネットの、なるべく前の方のあたりに40cm×7~8cm位の穴が開いていたと思います。」

-その目的は?

「その位置が一番素直な、一番空気が出る位置です。
もう少し手間がかかっても性能を優先しようという事で二台目はボンネットを切り換えていてもフィンみたいな物を付けてそこに開けてあげる方が一番空気の吸い出し効果がより発揮出来るだろうという事で、そこになっています。」

-素人的に、そんな大きな穴をボンネットに開けたら、雨とか泥とか入らないんですか?

「あくまでも競技車なので、それよりも空気を出す事を優先しようという流れです。
スポーツパーツとしてリリースした物は、下にカバーを付けたりとか、モデルによってそういう処理もして行きました。」














【革新的な新型車「ZC系スイフト」登場】
-ZC31型ベースになって来ると、空力的にも背が低くなった分有利になった気がするのですが。

「単純に格好いいじゃないですか。
それは我らスタッフ間でもそうでした。我々はスズキさんの車で色々楽しんで、前向きに開発して来ましたけれども、一代目、二代目というのは軽自動車の流れの足回りだったんです。
リヤサスペンションがITLというリジットのサスペンションで、アルトとかワゴンRとかの少し広い版と思って下されば、基本的には合っています。
それが三代目になって、リヤサスペンションが独立と言っていいタイプに変わったので、基本性能がすごい上げられるなという事で、シャシの部分もすごく進化しましたし、スタイリング的にもどんどん良くなって来ていて、この時代くらいから、かなりスタイリッシュになりましたので。
空力的な処理で言っても、やりやすかったですし、全体がグレードアップしたという、空力性能が一段上がったという感触がありました。」

-デザインチームのテンションもだいぶ上がって来たんじゃないですか?ヨーロッパのライバルと並んでも全く見劣りしない格好ですもんね。




JWRCからストリートへのフィードバックとは?

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