スイフトスポーツ
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渡辺 洋幸 (スズキJWRCエンジン部門/チーフエンジニア)
【2005年 スイフト スーパー1600(ZC系)デビュー】
-そしていよいよJWRCの方もベースモデルが、今皆さんにもすっかりお馴染みのZC31型にスイッチして来ました。
見た目も背が低くなって格好良くなって、世界のライバルと比べても全く引けを取らないようになったなぁと 思ったのですが、実際開発の方ではどうだったのですか?

「最初のスイフトスポーツ、次のイグニスと来て、最終モデルのZC31型。ここで一気に変わりましたよね?
サスペンションが分割してサスペンションをバラバラに動かせるような構造まで改造出来たので、車としては一気にレーシングカーになりましたよね?」

-そしてエンジンは進化はあったのですか?

「相手になる為の部分が、温度管理とかクリアランス管理とか、諸々やっていく中で、最終的にはアルミに変えました。
軽量化もひとつだし、温度環境的なピストンとの膨張だとか確認して行くと、冷えている時、熱い時も安定したクリアランス、 膨張したピストンをしっかりと放熱して抑えてくれる意味があったので、ピストンを安定させる事=ガスの抜けが減って、シール性が良くなって、よりトルクが出て パワーが出せるようになりました。
ホモロゲーション取るたびに同じ構成なんだけれども、ピストンの形を一気に変えたりだとか、毎回変えて来ました。
一度申請してしまうと、車両を使っている以上、変えられない主要な部品があって、そこで実績を得たり、その数年間に設計技術や解析、色んな物を変えた物を一気に投入していますから、 二世代目のイグニス5ドアの時と、最後のエンジンは外観こそ見た目はあまり変わらないのだけれど、中身は総取っかえしています。」

-スペック的には、そこまで変わらないですよね?

「スペックは、やはり最後の詰めなので、そこから何十馬力も上がる要素は無いのだけれど、わずかなピストンの形状だとか、放熱とか、 細かな金属の面粗度の調整だとか、色んな物を長い期間テストする中で見えて来る物があって、そういった物を投入する事で、 わずかにはトルク特性として若干出るとしても、かなりエンジン的には進化させて来ました。」

-そのわずかな違いが、エンジニアやトップクラスのドライバーには分かるんですか?

「実際スペック違いを、ある場所でエンジンを乗せ換えてテストした時、ドライバーはAというエンジンが良いと。我々はBというエンジンのはずだと。 当時グラベルだったと思うけれど、トータルのタイムで秒単位でタイムが変わったんです。
でもドライバー達はAがいいって言い張る。この矛盾は我々エンジニアとして、どうしたらいいんだろう。
もう明らかにタイムに差が出る。でもフィーリングはAがいいと言っている。ドライバーの言っている意見も参考にするけれど、 最終的には数値、タイム。
フィーリングやデザインが良いねっていう競技ではないので。 やっぱりタイム出てなんぼ。」












【M16Aエンジンの進化は開発環境の進化とともに】
-どんどん進化を続ける、このM型エンジンに対して、静岡磐田にある、この開発センターの方も進化を続けて行ったのですか?

「同じエンジンを年間この工場でテストエンジンを含めて50機位組んで、常に組み換えてテストして、わずかな変化、環境の変化を含めて数値化して行きたい。 という意味で計測機を入れ替えてもらったり、設備面も自分達で出来る事、この部屋も防音材と断熱材を貼って、 一年中、足元から、物を置く場所を一年間一定の20℃に保とうと、自分達でも努力して来ました。」

-エンジンベンチも何台一緒に回せるんですか?

「今4台ですね。それでも当時ベンチ室が一杯で、ベンチ待ちみたいな状況で、色んな事をテストしていました。」

-そしてZC31型のスイフトスポーツをベースとしたスーパー1600。これが最後のJWRCでチャンピオンになりました。
10年間で3回のチャンピオンって、これ凄い事ですよね?




【モータースポーツの技術と市販車の技術の関連性】
-改めて渡辺さんを始めとした、当時のスズキスポーツの技術力の高さを感じるのですが、その技術はやがてコンプリートカー、あるいはたくさんのパーツとしてお客様の元に送り出されて行きました。
やっぱりJWRCとモンスタースポーツ、あるいはスズキスポーツのお客様向けに発売する商品、ここには関係あるんですか?

「当然あります。その当時も商品の前に量産車に、1600ccで200馬力を超える、9000回転の回転数を決められた中で、いかに燃焼を良くしたりとか、 高回転でフリクションを少なくしようっていうのは、ある意味基本構成は今の低燃費エンジンと何も変わらない。
やっている事は違うかもしれないけれど、その当時からメーカーの人達と交流があって、何とかこれを量産車の技術に、発想とか、こうするとこうなるとか。 シリンダーとか、金属、カムシャフト、色んな所の面粗度、オイル保持を良くするとか、特殊なオイルを使わなくても、そういった物が出来るとなると、 それは低燃費エンジンでも使える事だし、フリクションの低減って言ったら無駄なパワーをそういった所に使われないようにする技術は、 コスト的な部分を除いては使えると思います。
実際さっきある部分をアルミに変えたと。スズキさんが持っているメッキの技術を使ってアルミのシリンダーに変えたんです。
元々量産の技術を、我々が借りて使った。逆に言ったら、それがそうやって使えたとか、それを使うためにどうしたか、 っていうのが、またフィードバックで戻って来るという意味では十分役に立っていると思うので。
量産車にもそうした技術は使えるし、使っているというのと、パワーを出す=チューニングなので、この部品が量産車に付くわけがない。
だったらこういった発想で、こうやったらパワーが出るというのをなんとか量産エンジン、コンプリートエンジンに投入したら 最終的に230馬力位に出ていたんだけれど、そこまで出ないにしても、せめてリッター100馬力位欲しいねと。
燃費も良くて、街中でも乗りやすくてというエンジンにするには、ある程度は性能を抑えなきゃいけないとしても、 130~140馬力位のエンジンを160馬力位には引き上げられるとか。
そういった意味では、こういった経験は当然量産車にも使える。」








【渡辺のJWRCのノウハウが活きるモンスターの製品】
-そして今でもモンスタースポーツの人気商品のエアインテーク関係ですとか、等長のエキゾーストマニホールドですとか、こういった物もやっぱりラリーの経験が生きているという事ですよね?

「実際そのあたりの部品は、私が全て車を確認して、商品開発を一緒にやるスタッフと構造をこうしようとか、ここから空気入れてこうやろうとか、 当然ラリー車と同じように、これを取りはらってあそこにっていう訳にはいかないから、この隙間を通して、ここから外気温を取ろうとか
その当時も賛否両論あって、カーボンのパーツを作った時にすごく高くなると。
渡辺さん、スイフトですよ。スイフトにそんな高い物を付けて売れる訳ないじゃないですか。
でも我々はやっぱり世界選手権を戦ってきて、本物を提供する義務があると。外気温をちゃんと吸える事によるメリットはお客様自身に理解してもらって、付けたら性能が良くなった。 エンジンルームにむき出しのフィルターっていうのは、皆さん徐々に控えるようになってきて、チューニングする人達は、エアボックスを使って、競技車のようにエンジンレイアウトしてくれる人が 増えましたよね。
ラリー車とかGTカーでも参考に出来ない部分なんて何もなくて、要はあれはどうやって性能を上げて維持するかという事を、 必死になってプロのエンジニアさん、レースに携わる人たちが造っている。
だからそれを少しでも見て、なんでああやっているんだろうっていうのが、基本のひとつだと思っています。」






【渡辺のモンスターコンプリートカーにかける思い】
-やっぱり量産車だと、色んな制限が、例えばコストがあったり騒音とか。自分が投入出来る範囲で、モンスターのパーツを入れ替えるだけでも、 やっぱり車は変わってくるものなんですか?

「変わります。やっぱりコンプリートカーっていう車自体が、どちらかと言うとスポーツカーであって欲しい。乗った時に、見た目太いタイヤ履いて車高が下がって、なんか格好いいけど、 走ったら遅い車って残念でしょ。
だったらスイフトをスポーツカーに託して、わぁ速いな、あの車!そういう車って憧れるじゃないですか。」

-確かに。ラリーなんかでも上のクラスを小さい車がカモるとそれだけで燃えますよね。


【JWRC裏話:2003ラリー北海道 誰も抜けないスイフト スーパー1600】
「日本の人達に最初にスーパー1600の車をラリーの会場で見てもらったのは、ラリー北海道の時なんです。 この時はまだWRカーとかがなくて、グループNとか唯一キットカーを持ち込んだのが我々で、その当時ヨーロッパのダニエル・カールソン 最終的にプジョーのワークスドライバーにもなりましたけれども、シードゼッケンだったので、確か5番目だったんです。 これが凄かったんです。
雨の中のハイスピードで、赤黒のあの車よりも速かったんです。」

-二輪駆動ですよね?

「データロガー見て驚いたのが、ハイスピードなところ6速で全開で、スリップだとか色々あるにしても190キロ位の車速で、こういうコースを走っている。
これは多分重い車じゃ、中々出来ない。だからタイムは結局5番目の位置が1日目2日目は崩れなかった。誰もターボの四駆の北海道の雨の中だったと思うけど、抜けない。
それは快感でした。」






【モータースポーツ裏話:M型ターボ搭載のダートラ仕様スイフト】
-いま改めて、ベースとなるスイフトスポーツがZC33型にスイッチして、エンジンもターボエンジンに変わりましたけれど、
改めてM型エンジンを振り返ってどんなエンジンですか?

「これだけ部品を用意して、ちゃんとすると、こういう性能が出せる。本当はもうちょっとカテゴリーを無視して、バルブをもっと大きくしたりとか、ボア・ストロークも変えたり すれば、もっと色んな事が出来る。
実際M型競技車だけじゃなくて、ダートラにも投入した事があって、S2クラスが当時出来て、二台体制で出た事があるんです。 それはターボの四駆なんです。
排気量をあえて1450にして、ターボ過給して350~360馬力で走らせたんです。
それはそのクラスで完全優勝!
第一戦目の九州、その車を満を持して投入した時に、エントリー用紙にコメント欄があるので、目標は総合優勝ですって書いたの。 まさにそのイベントで総合優勝したんです。」

-スイフトみたいな小さな車が

「そこから快進撃で、そのクラスどころか、その上のクラスのランサー達の改造車クラスよりも速かった。」




【究極のM型エンジン スーパースイフト用「M19ターボ」】
-M型エンジンの最終進化系として、スーパースイフトっていうのをリリースした事がありましたよね?
モンスター田嶋さんが、あちこちのデモランで乗っていらっしゃいましたけれども、ついに421馬力まで行ったと。凄いですね。M型エンジンって。

「やっぱり基本的にNAであそこまでいっている。
それを過給してターボにして、足りないのは排気量なので、排気量はボアアップして1900に上げて、そうするとある程度の大きなタービンが回せる。 次はパワーを上げるために過給圧を上げる。 エンジンの中の持たない所を強度アップしてあげれば、持つだろう。
そういった図式でやって行くと、ああいう車も出来上がるっていうM型の進化系ですよね。
ターボはずいぶん前にダートラで実績を上げて、さらにそれの排気量を上げて当時は300馬力の後半だったかもしれないけれど、それを400馬力にまで引き上げるという事は、 私の中では想像が出来た内容で、そのチャンスというものを、うちのボスである田嶋さんがくれて、ああいう車を作れたという所ですね。」




渡辺エンジニアは新型スイフトをどう料理するのか!?続きは次ページで!

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